COLUMN

Case6:開業医の終活

先日、お伺いをした医療法人(内科クリニック)の理事長夫人からちょっと重たいご依頼を頂きました。それは、自分達の今後の人生を考えてそろそろ「終活」を始めたいとのご依頼です。

 

 

はじめにこのクリニックの背景を説明します。

 

某地方都市で先代の父から診療所を継承されており、二代目の現理事長は今年68歳・理事長夫人は62歳になられます。ご子息は長男さんと長女さんがおられますが、どちらも医師ではなく医療法人ならびにクリニックは承継しない予定。

 

現在は外来と在宅の両方を手掛けておられ、歳を重ねると在宅の対応がキツくなるので、将来的には外来診療のみで細々と「生涯現役」と考えておられました。

 

ところが先日、理事長のご友人であるクリニックの院長が急逝されて大変なことになったのを目の当たりにされたらしく、連休明けに私に連絡が入り「相談したいことがあるからすぐに来て欲しい」とのご依頼を頂き、駆けつけました。

 

詳しくお話をお伺いすると、

・同い年の友人で、同じ県下で開業。

・4月下旬から体調を崩しておられ、連休前の夜診は本当に辛そうで看護師もみていられない様子だった。

・「患者さんに迷惑は掛けられないから」と言って、最後の一人を診察した後に救急病院へ搬送。

・ICUに入るも、未明に息を引きとられた。

・その後、通夜式と葬式を連休中に済ませるも、連休明けからは、残されたスタッフが受診に来られる患者さん対応に追われ、近隣の医療機関への紹介状作成などで大混乱だったとか・・・・

 

奥様から一連の経過をお聞きし、「とても他人事とは思えない。うちも院長に何かがあれば同じ様に大混乱するだろう・・・」とかなり心配のご様子でした。

 

その上で、まずは現在加入されている保険の内容を確認。

 

医療法人と個人で合計3億円近い保険金額が確保出来ている事をお伝えすると、とりあえず経済的な準備は大丈夫であることが確認出来てホッとはされました。

 

ただ今後、クリニックをどうしていくのか?医療法人をどうするのか?という重大なテーマが残されています。

 

奥様からは、

「あと5年を目処に診療所を閉めたいと考えています。それまでに患者さんに迷惑が掛からない様に、

・後継者を探すか?

・他人へ売却するか?

・他院への振り分けをするのか?

を考えて決めなければ・・・と思っています。」

とのことでした。

 

とりあえず私の方でできることは、買主を探すことと、5年後の売却または閉鎖に向けて医療法人の決算書をキレイにする事とストックを作る事であり、これらの事でお力になれることをお伝えしました。

 

なかなか重たいテーマです・・・・

 

ここで問題になったのが、決算直前にも関わらず月次試算表を1枚も届けていない会計事務所の存在です。ご夫婦の切実なご依頼にお応えすべく色々と手を打っていきますが、会計資料がなく、現状が分からなければ手の打ちようがないので、まずは会計事務所の変更から手をつけていきます・・・・

 

開業医は「生涯現役」と考えておられる先生は多くおられます。

 

ですが、実際問題として後継者が不在であれば、開業医として人生を終えると残された家族・スタッフ・患者様に負担をかけることも事実です。

 

とはいえ、地方都市では地域医療への役割を考えますと、簡単にクリニックを閉めるという訳にもいきませんが、親族に後継者がいないと後継者を探す作業は難航します。

 

団塊の世代の先生方にとっては「開業医の終活」は切実な問題になりつつあります・・・・・

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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