COLUMN
医療法人以外の法人での医療機関運営
医療機関を運営する法人は医療法人以外でも可能という事をご存じでしょうか?
平成19年の厚生労働省医政局長発の通達文に以下の内容があります。
<通達文引用>
医療法人以外の法人による医療機関の開設者の非営利性の確認について
(平成19年3月30日)
(医政総発第0330002号)
(各都道府県医政主管部(局)長あて厚生労働省医政局総務課長通知)
(一部省略)
今般、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(省略)において、医療法人の解散時の残余財産は個人に帰属しないこととする等の規定を整備し、医療法人の非営利性に関する規律の明確化を図ったところである。
改正法の趣旨に鑑みれば、医療法人以外の法人についても非営利性の徹底を図ることが必要であることから、今般、医療法人以外の法人が解散した時の残余財産の取扱いについて、医療機関を開設する際に留意すべき点を定めたので、当該法人の開設許可の審査及び開設後の医療機関に対する検査にあたり十分留意の上厳正に対処されたい。
なお、その他の事項については、引き続き平成五年通知に基づいて審査及び指導願いたいが、近年、特定非営利活動法人や、今般の公益法人制度改革による一般社団法人・一般財団法人など、従来の法人と比べて簡易な手続きで法人を設立できる仕組みが整備されてきていることから、平成五年通知に定める「医療機関の開設者に関する確認事項」については、従来以上に慎重に確認の上、対処されたい。
併せて、本通知の旨を各都道府県内関係部局に周知願いたい。
記
(開設許可の審査に当たり、法人解散時の残余財産の取扱いについて確認する事項)
医療法人以外の法人が開設した医療機関について、解散した場合の残余財産が帰属すべき者に関する規定が、あらかじめ定款、寄附行為等で定められており、かつ、その者は、出資者又はこれに準ずる者以外の者であること。
ただし、本通知の発出以前に設立又は設立認可の申請が行われた医療機関の開設主体については、この限りではない。
<引用終わり>
明確に医療法人以外の法人と書いてある通達文があります。
医療法人は医療法によって人格が与えられる法人です。
医療法人の設立には行政の設立認可申請が必要になります。そして設立後も、毎年の事業報告書の提出が義務付けられており、定款変更などは行政の承認がないと行えません。
さらには解散をするにも行政の承認が必要で、場合によっては承認が下りないケースもあり得ます。
医療法人の運営はかなり行政の関与を受ける事になり、制限が多くあるのと、過去にも書きましたが、院長の可処分所得が減るので税軽減目的での医療法人化については疑問を持っております。
■参考記事
ですが、一般社団法人で診療所の経営が出来るのであれば、可処分所得については相変わらず制限を受けますが、行政の関与が大幅に減少するので非常にメリットは大きいと思います。
ただし一般社団法人による診療所経営のデメリットもあります。
まずその1つ目は、診療所経営を一般社団法人として設立手続きが出来る行政書士が少ないことです。
実際には定款の作りこみ方や保健所への開設許可届の提出など注意しなければならない点があり、保健所によっては一般社団法人の開設許可届を受理しないケースもあるそうです・・・
ただ実際には先ほどの厚労省医政局長通達がありますので、開設は出来るのですが、その交渉がキチンと出来る行政書士かどうか?がポイントになりそうです。
次に分院展開を行う場合には、さらに手続きがややこしくなるので分院を出すようなケースでは医療法人にしている方がよさそうです・・・・
最後に平成30年の一般社団法人に関する税制改正による影響です。
特定一般社団法人に該当する場合には、理事の相続が発生した際に一般社団法人を個人とみなして相続税が課税されるルールに変更となりました。
これにより一部の税理士先生は「一般社団法人による診療所経営のメリットがなくなった」と考えておられるそうですが、もともと一般社団法人による診療所経営を行うには、国税庁が言う「非営利性が徹底された法人」の要件を満たす必要があります。
この要件の中に「各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数 の3分の 1 以下であること 」がありますので、理事の構成を工夫すれば、特定一般社団法人の認定を回避できる余地は十分にあります。
さらに特定一般社団法人ならびに非営利性が徹底された法人の要件には、社員の同族要件がありませんので同族で運営権は確保出来ます。
一般社団法人による診療所経営については、メリットとデメリットはあるものの検討の余地は十分にありそうです。
少なくとも開業医が法人成をする際は、医療法人だけでなく一般社団法人という選択肢も入れて検討することをオススメいたします。
<文責>
株式会社FPイノベーション
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