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税制改正後の法人生命保険~含み益と課税繰延効果を検証する~

2019年(令和元年)の法人税基本通達の改訂により、生命保険の法人契約において課税繰延効果によるメリットがほぼなくなったのは周知の事実です。

ですが法人において、経営者に対する保障が不要になった訳ではありませんし、法人における資金積立ニーズがなくなった訳でもありません。

 

さらには法人契約の生命保険において、保障を確保する機能と資金を積立する機能、さらには支払保険料の全部または一部が損金に計上出来るという効果がなくなった訳でもありません。

 

単に課税繰延効果によるメリットがなくなっただけです。もう少し詳細に確認をすると、

 

・支払保険料100

→10年累計保険料1,000

 

・10年目返戻率85%

→10年目返戻金850

 

の契約について支払保険料の全額が損金にできるタイプであれば、10年間保険料を支払うことで実効税率が30%であれば、1,000×30%=300の法人税が軽減され、10年目返戻金850について課税されなければ、保険加入によるメリットは850+300=1,150となりました。

 

負担した保険料は1,000ですから1,150-1,000=150が生命保険を活用して課税繰延を行ったメリットとなります。

※ただあくまでも解約金に対する益金課税がないことを前提にしている点はご注意下さい。

 

これが2019年(令和元年)の改訂により課税繰延効果のメリットがなくなりました。

 

・支払保険料100

→10年累計保険料1,000

 

・10年目返戻率85%(最高解約返戻率)

→10年目返戻金850

 

この場合、最高解約返戻率が85%ですから新ルールでは支払保険料の40%を損金に計上が出来ます。

1,000×40%=400

 

実効税率30%と仮定すると、

400×30%=120

となり、法人で保険料を支払うことにより120の法人税が軽減され、10年目の返戻金850について課税されなければ850+120=970となり負担した保険料1,000に対して30は目減りをしているので、メリットはなくなりました。

 

ですが、資産計上額は600に対して解約金は850ですから、850-600=250は解約時に益金計上が必要です。ということは、250については利益を繰り延べる事が出来たので、課税繰延効果はあったことになります。

 

もっと言えばわずか30の実質負担で保障が確保出来たと考えれば非常に大きなメリットであると言えます。

※解約時の益金課税がない前提でのメリットですのでご留意下さい・・・

 

法人における支払保険料の経理処理ルールが変わっても課税繰延効果はなくなっておらず、そして実質負担が抑えられる効果はなくなっていません。あくまでも2019年(令和元年)の改訂で課税繰延効果による「メリット」がなくなっただけというのが実態です。

 

例えば、今回の新型コロナウィルス感染症の拡大による資金需要や利益減少と言ったような事態に備えて、「緊急予備資金」として生命保険による積立をしていた場合には、積立金を活用することが出来ますし含み益を出すことで資金や利益を補てんすることが可能です。

 

リスクマネジメント的には、低コストでリスク移転をしつつリスクファイナンスとしての保有原資を確保することが可能になります。

 

そう考えますと、保障(レバレッジ)が必要な経営者にとっては生命保険を使って一部損金を作りつつ、積立をすることはメリットが大きい可能性があります。この事実を踏まえまして、実際の定期保険で試算を行いました。

 

50歳男性 保険金額1億円

 

Plan:A

73歳満了定期保険 月額保険料77,300円

最高解約返戻率47.3%(全額損金計上)

 

Plan:B

80歳満了定期保険 月額保険料106,800円

最高解約返戻率68.7%(60%損金計上)

 

Plan:C

99歳満了定期保険 月額保険料245,300円

最高解約返戻率84.3%(40%損金計上)

 

この3つの商品で10年目の状態を比較します。

 

Plan:A

1)累計保険料9,276,000円

2)資産計上額0円

3)解約返戻金4,060,000円(返戻率43.8%)

4)含み益(3-2)=4,060,000円

負担保険料(1-3)5,216,000円

 

Plan:B

1)累計保険料12,816,000円

2)資産計上額5,126,400円

3)解約返戻金8,580,000円(返戻率66.9%%)

4)含み益(3-2)=3,453,600円

負担保険料(1-3)4,236,000円

 

Plan:C

1)累計保険料29,436,000円

2)資産計上額17,661,600円

3)解約返戻金24,820,000円(返戻率84.3%)

4)含み益(3-2)=7,158,400円

負担保険料(1-3)4,616,000円

 

※参考:70歳満了無解約定期(解約返戻金がないタイプ)

月額保険料53,200円 

10年累計保険料6,384,000円

 

 

こうやって並べますと、当然ながら毎月の保険料は無解約定期が最安値となります。ただ10年間の負担保険料は全損よりも40%損金タイプよりも60%損金タイプが安くなります。

 

ちなみに含み益(解約時の益金額)は40%損金タイプのPlan:Cが最多となります。

 

・毎月の保険料負担額なのか?

・途中解約時の益金計上額なのか?

・解約時点の払込保険料総額-解約返戻金=負担保険料なのか?

 

など軸足をどこに置くのか?によって活用する保険商品が変わってきます。

 

ただ1つ言えることは、保障が必要な経営者にとっては有事の際の緊急予備資金準備を兼ねて解約返戻金があるタイプでかつ全部又は一部損金計上が出来る保険商品を活用することは十分検討の余地があるということです。

 

法人にて生命保険を検討される場合には、毎月の支払保険料だけでなく実質負担の金額や含み益など、法人の実態に合わせて多角的に検討してみて下さい。

 

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<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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