COLUMN

持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について

もうご存知の方も多いと思いますが、平成29年9月29日に厚生労働省より「持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について」が発表されています。(平成29年10月20日改定)

 

厚生労働省HP

 

 

「持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について」(以下、認定医療法人制度)についてはすでにご存じの方も多いと思います。今回の通達について詳細を読みましたが、なかなか興味深い内容となっており、持分あり医療法人の理事長であれば興味のあるテーマだと思いますので、この「認定医療法人制度」について確認がてら簡単に解説して参ります。

 

そもそも医療法人の形態は幾つかあるのですが、認定医療法人制度の対象となるのが平成19年4月1日以前に設立申請がされた社団医療法人になります。現在においては、いわゆる「経過措置型医療法人」と呼ばれる形態で、出資持分があり、財産権が認められている法人形態です。

 

出資持分に対して財産権が認められているという事は、医療法人の解散時、または出資持分を持っている社員が退社をする場合には、保有している持分割合に応じて医療法人の財産を受けられる権利を持っています。

※社員は「職員」の意味ではなく、医療法人の最高意思決定機関である社員総会の構成員をさします

 

この権利があるために、出資持分は一般の株式会社の普通株式と同じように相続税の課税対象財産となります。特に医療法人の場合は、株式会社と違い配当が出来ないために出資金の評価が高くなる傾向が強く医療法人の理事長にとって悩みのタネの一つでした。

 

出資金評価の対策法の1つとして、個人が持っている「出資持分」を全員が放棄をして、「出資持分のない医療法人」に移行することも出来ます。

 

ただし、出資持分を全員が放棄をすると、医療法人は財産払戻の義務がなくなることにより経済的効果を受けるので、相続税法66条4項の規定により医療法人を個人とみなして贈与税が課せられるというデメリットがありました。

※厳密には一定の要件を満たせば贈与税課税の対象からも外れるのですが、多くの医療法人においてはほぼ無理と思われる要件なので、ここでは除外します。詳しくお知りになりたい方はこちらをご確認下さい。

<国税庁HP>

持分の定めのない法人に対する贈与税の取り扱い

 

 

そのために「経過措置型医療法人」の持分放棄は、ほとんど進んでいないのが実態でした。さらには、出資持分の相続税評価額が高い医療法人が多いことで、相続税の負担が重たく、医業承継にとって大きな問題となっていました。

 

そこで厚労省は平成26年に「認定医療法人制度」(分かりやすくるために旧制度と表記します)を作って、出資持分を持っている人に相続が発生した場合には、出資持分の放棄をするための計画を出して認定されれば、当面の間は相続税や贈与税を猶予する制度を作りました。

 

ところが、この旧制度の大きな欠点は相続税法66条4項の規定は免除されず、医療法人に贈与税が課税されるということでした。そのために旧制度を使って持分なし医療法人へ移行すると手を挙げた医療法人はわずか61件に留まりました。

※61件もあったのか?という見方もあります・・・・・

 

この旧制度の欠点を是正すべく平成29年10月1日からスタートした新認定医療法人制度(こちらは新制度と表記します)については、一定要件をクリアーすれば法人に対する贈与税課税も免除されるという内容になりました。そのために新制度は経過措置型医療法人の理事長にとっては、検討をしておく価値のある内容となっておりますので、今回はこの新制度を検証します。

 

先ほどご紹介をした厚生労働省が発表した「持分の定めのない医療法人への移行に関する計画の認定制度について」の中からポイントになるであろう主な点を箇条書きでピックアップしていきます。

 

◯新制度は平成29年10月1日から施行されています。

 

◯今回の趣旨は「医療法人の非営利性」を徹底させるために持分なし医療法人への移行の促進が必要であると考えている。

 

◯期限は令和2年9月30日まで。

※令和2年税制改正大綱で3年の延長が提示されています。

 

◯社員・理事・監事・使用人その他の当該医療法人の関係者に特別の利益を与えない運営になっている事

→逓増定期の名義変更プランや養老保険の逆ハーフタックスプラン(リバースプラン・逆養老プラン)をやっているとアウトです。

 

◯認定を受けた医療法人が持分なしに移行してから6年間を経過して初めて認定医療法人が終わる。

→この6年間は運営状況を厚労大臣に報告をしなければならない。

 

◯新制度で持分を放棄しても相続税法66条4項に基づく贈与税課税はされない。

 

◯新制度を必ず活用して持分なしに移行しなければならない訳ではない。

→活用しなければ贈与税の課税対象になる可能性は大

 

◯持分なしへの移行は認定された日から3年以内に行う必要がある。

 

◯運営に関する要件は以下の通り

・関係者に特別の利益を与えていない

・理事や監事に対する報酬は不当に高額にならないような支給基準を定めている事

・法令違反をしていないこと

・帳簿書類等に事実を仮装隠蔽していないこと

・社会保険診療報酬が全収入の80%以上である事

・自費患者に対しての請求を社会保険診療報酬と同一の基準により計算されている事

・医療診療収入が、経費に100分の150を掛けた金額以内である事

 

◯新制度の認定を受けた医療法人の出資持分に対して相続税や贈与税が課せられる場合においては、移行期限(3年)までは納税が猶予され、出資持分が放棄された場合には納税が免除される。

 

◯新制度で持分なしに移行した医療法人は、本来課せられるであろう相続税法66条4項による贈与税は適用されず課税されない。

 

◯ただし持分なしに移行した法人が6年以内に認定を取り消された場合には、医療法人を個人とみなして贈与税が課せられる。

 

上記のピックアップはあくまでも主な内容ですので、詳細は通達をご確認下さい。

 

厚生労働省HP

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

お問い合わせはこちら

この記事に付いているタグ