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意外に知られていない生命保険配当金の実務
令和元年の法人税通達改定後、多くの生命保険商品において法人における課税繰延効果がなくなりました。なお改定内容はコチラにて詳細を解説しておりますので、ご確認下さい。
これを受けて注目されているのが変額定期保険・外貨建て定期保険と有配当タイプの定期保険です。
変額定期保険については、特別勘定の予定利率における最高解約返戻率判定でOKという見解が国税庁よりだされています。そして外貨建て定期保険については、外貨ベースにおける最高解約返戻率で判定するとの見解が出ています。
有配当商品については、予想配当を含まない返戻金で最高解約返戻率を判定するとされています。
変額と外貨については、運用実績や為替レートによっては大幅にプラスになる事もあればマイナスになる事もあります。ただ有配当商品については、保険会社が破綻しない限りは配当を除いた解約返戻金は保証されており、配当も過去実績から算出していますから大幅に狂うとは考え難いです。
ですが、配当金は配当が付加された事業年度において益金計上するのが正しい処理ですので、配当部分を毎年益金計上すれば課税繰延効果は得られません。
ただ実態として、現場において有配当商品の配当をキチンと計上しているケースは非常に少ない様に思います・・・
ここでは配当に関する実務を細かく確認していきます。
まずは、配当の益金計上を定めた法人税基本通達9-3-8から確認します。
〇法人税基本通達9-3-8(契約者配当)
法人が生命保険契約(省略)に基づいて支払を受ける契約者配当の額については、その通知(据置配当については、その積立てをした旨の通知)を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、当該生命保険契約が9-3-4の(1)に定める場合に該当する場合(9-3-6の(2)により9-3-4の(1)の例による場合を含む。)には、当該契約者配当の額を資産に計上している保険料の額から控除することができるものとする。
(昭55年直法2-15「十三」により改正)
(注)
1 契約者配当の額をもっていわゆる増加保険に係る保険料の額に充当することになっている場合には、その保険料の額については、9-3-4から9-3-6までに定めるところによる。
2 据置配当又は未収の契約者配当の額に付される利子の額については、その通知のあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。
ここにありますように、配当の通知を受けた日の属する事業年度に配当額を益金計上する必要があります。
実務的には配当金を据置く「据置配当金」が多いですから、経理処理としては以下の仕訳が必要です。
<借方>配当金積立金
<貸方>雑収入
これを毎年続けていくと、据置かれている配当金と同額が資産として計上されており、この保険を解約する場合には、
解約金-(前払保険料+配当金積立金)=保険解約益
となりますので、課税繰延効果が得られていないことがお分かり頂けると思います。
当然、単純返戻率は上昇しますので、払込保険料に対する返戻率はアップします。
ですので、有配当商品を検討する場合は、課税繰延効果や損金算入割合を気にするのではなく、単純返戻率で各商品と比較するべきだと考えています。
あと有配当商品において注意しなければならないのは、配当額を益金計上する日付です。
配当については、保険会社における総代会で支給有無が決まりますが、個別契約においての配当金は契約応当日に付加されます。
ですから、契約応当日に前述の仕訳を起こす必要があります。
ただ注意が必要なのは、実際に決まった配当金が契約者へ通知されるのは、契約応当日から2ヶ月程度時間が掛かりますので、契約応当日と決算日が近い場合には、個別に保険会社へ確認をして顧問税理士へ報告することが必要です。
法人の申告期限は決算後2ケ月ですから、ちょうど決算内容がまとまる頃に配当金通知が届くようなイメージでしょうか・・・
実際に配当計上が1年ズレていたとしても、その処理をずっと継続していれば問題はないのでしょうが、正しい実務の流れは知っておいて頂きたいと思います。
国内大手の生命保険会社の契約は、有配当商品が多くありますので、くれぐれもご注意下さいませ。
<文責>
株式会社FPイノベーション
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