COLUMN

外貨保険・変額保険へ加入する前に注意すべきこと

生命保険業界において、各社の予定利率がほぼ0%に近いくらいに下がり、円建て商品における積立のメリットがほぼない状況下において、外貨建て商品と変額商品がいろいろな場面で脚光を浴びています・・・

外貨建て保険の場合は、予定利率の高さと為替差益への期待があるのに対して、変動リスクは為替差損のみなので分かりやすいと言えば分かりやすい商品です。

 

さらに外貨通貨で換金出来る保険会社であれば、外貨で引出しておいて外貨口座へ入れておくことで、円転するタイミングも図れますので、為替リスクを抑えることが出来るのもウケている要因の一つかと思います。

 

ちなみに外貨建て商品は、円→ドルとドル→円の為替コストが保険会社によって違うので、ここは注意しておくべきポイントです。保険会社によっては0.1銭から50銭までの違いがありますので、運用利率が高い保険会社であっても、為替コストで運用メリットが吸収されてしまう可能性がありますのでご注意下さいませ。

 

これに対して変額保険は、運用実績によって解約金や満期保険金の増減幅がかなり大きいので、リスクは大きいですが期待出来るリターンも大きいので、支払い保険料が増減する外貨を好まない方で、リスクが取れる方は変額保険を選択されるケースもあります。

 

ただ、一定年齢以上の資産家・経営者はバブル期の悪名高い変額保険の販売実態を覚えているだけに、変額保険というだけで拒否反応を示す方もおられます・・・・

 

私が保険業界に入ったのが平成7年でバブル崩壊後でしたので、当時、社会問題になっていたのはよく覚えています。当時は損保でしたが、その後に会計事務所へ転職し、保険担当者として資産家や経営者の対応をしている際にバブル期の変額保険の話しはよく聞きました・・・

 

こんな悪名が高かった変額保険ですが、現在においてはキチンとリスクをお伝えして認識をして頂ければ、選択をされるお客様が増えてきているのも事実です。変額保険も正しい認識と正しい目的での活用においては良い商品と言えるのかも知れません・・・

 

ただ変額保険においてくれぐれもご注意頂きたいのは、保険会社の健全性です。

 

定額保険はご存知の通り保険会社は一般勘定での運用ですから、破綻した場合には、契約者保護機構の保証対象となります。過去のコラムでも書きましたが、私は取扱っていた保険会社の2社が破綻した経験があります。

ですので、一般勘定における破綻処理はある程度、イメージが湧くので良いのですが、特別勘定で運用している変額保険を取扱ったことがある保険会社の破綻処理は未経験です・・・・

 

「破綻した時の保険金額はどうなるのか?」

「責任準備金の90%が保護されるというが、変額保険における責任準備金はどの範囲までが90%で保護されるのか?」

 

ここの部分はキチンと確認をしておいた方が良いですし、少なくともそういった不安を払拭するためには経営的に健全な保険会社の商品を活用しておくのが無難だと個人的には思ってます。

 

基本の確認として、生命保険会社が破綻した場合の補償内容を生命保険契約者保護機構のHPより抜粋します。


~生命保険契約者保護機構HPからの引用~
https://www.seihohogo.jp/qa/qa12.html


保険契約の移転等における補償対象契約は、運用実績連動型保険契約の特定特別勘定(注)に係る部分を除いた国内における元受保険契約で、高予定利率契約を除き、破綻時点の責任準備金等の90%まで補償されることが、保険業法等で定められています。

なお、保険契約の移転等の際には、責任準備金等の額の削減に加え、保険契約を引き続き適正・安全に維持するために、保険料等の算定基礎となる基礎率(予定利率、予定死亡率、予定事業費率等)の変更が行われる可能性があり、その結果、保険金額が減額されることがあります。

また、保険契約を有効に継続させていくためには、一定の保険契約者数を維持する必要があることから、一定期間、早期解約控除制度が設けられる可能性もあります。


(注)運用実績連動型保険契約の特定特別勘定に係る部分とは

特別勘定を設置しなければならない保険契約のうち、運用結果に基づき支払われる保険金等の全てについて最低保証(最低死亡保険金保証、最低年金原資保証等)の付されていない保険契約に係る特別勘定を指します。

更生手続においては、当該部分についての責任準備金を削減しない更生計画を作成することが可能です(実際に削減しないか否かは、個別の更生手続の中で確定することとなります)。


~引用終わり~


この契約者保護機構の文章を見ていると、変額保険において、「運用実績連動型保険契約の特定特別勘定」は補償対象外と明記されています。この「運用実績連動型保険契約」は
別のQ&Aで定義されています。

 

~下記ページからの引用~
https://www.seihohogo.jp/qa/qa23.html

 

運用実績連動型保険契約とは、特別勘定を設置しなければならない保険契約のうち、運用結果に基づき支払われる保険金等の全てについて最低保証(最低死亡保険金保証、最低年金原資保証等)の付されていない保険契約を指します。

運用実績連動型保険契約とは、平成18年3月13日に公表されたパブリックコメントの考え方(金融庁の考え方)では、公表時点において、特別勘定を設置した下記の商品が該当するものとされています。

・確定拠出年金保険
・団体生存保険
・変額年金資金運用基金保険
・企業年金連合会保険
・国民年金基金連合会保険
・新企業年金保険
・確定給付企業年金保険
・厚生年金基金保険
・国民年金基金保険

この運用実績連動型保険契約のうちの特別勘定(これを特定特別勘定といいます。)に係る部分については、補償対象契約から除外されており機構による補償の対象外となりますが、更生計画において責任準備金を削減しない更生計画を作成することが可能です。(実際に削減しないか否かは、個別の更生手続の中で確定することになります。)

保険業法上の破綻処理手続の場合についても、更生手続の場合と同様の取扱いが行なわれる可能性がありますが、この点も個別の業務及び財産の管理に関する計画の中で確定することになります。

 

~引用終わり~

 

これを踏まえまして、変額保険が破綻した際の取扱についてはかなり気になっているので各社に詳細を確認した結論は、

 

「破綻しないとどうなるか分からない・・・」

 

というのが現時点の状況です。

 

定額保険とは違い、責任準備金を特別勘定にて運用する変額保険の場合、破綻時の生命保険契約者保護機構が補償すると言っている責任準備金はどの部分までを指すのか?というのが明確にはなっていない様です・・・

 

ですので現時点での結論としては、定額保険と同じく変額保険も契約者保護機構の補償対象となるが、実際にどうなるかは分からず、破綻会社の傷み具合によって変わるという事の様です。

 

実際に過去の破綻事例では、定額保険においては基礎率の変更&早期解約控除の適用により、破綻後の責任準備金90%は破綻前の責任準備金90%を大きく下回るケースはありました。特に早期解約控除は傷み具合が激しいとかなり厳しい控除が設定されます。

 

そのために、変額保険に加入をしている保険会社が破綻した場合には、大幅に削減される可能性がありますので、くれぐれもご注意下さい。

 

特に変額保険の場合には、保険期間を比較的長い目に設定をして複利効果を狙うケースも多いため、変額保険を検討する場合には商品性以上に保険会社の健全性はご確認下さいませ。

 

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

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