COLUMN
国外財産調書
先日、法人経営者のお客様より個人所得税の税務調査について顧問税理士より連絡があったとの連絡が入りました。生命保険を使った各種スキームで思い当たるフシがあったので、顧問税理士を交えて調査前に一度打ち合わせを行いました。
その打ち合わせの席で、過去の所得税申告書をチェックしたところ生命保険に関する申告は適正にされているので問題はなさそうでした。そこで顧問税理士から「海外の財産についての状況はどんな感じですか?」との質問。
ご存じの通り海外に5,000万円以上の資産を保有している場合には税務署に「国外財産調書」を提出しなければならない制度が平成26年1月よりスタートしています。
海外に金融資産を持っておられる事は顧問税理士も把握しており、その近況を確認されたい様子でした。こちらも最近は資金を動かしておられず5,000万円以下であるために報告義務はない状況でした。
この流れでこの顧問税理士に質問をしたところ、2019年に入ってから税務署からの国外財産調書に関するお尋ねと調査がかなり増えているとの事。
それを裏付けるデータとして、国税庁が2019年1月に発表したデータを見ると非常に興味深い内容が公表されています。
■国税庁ホームページ
平成29年度の国外財産調書に関して提出件数の総数は9,551件。
内訳は、
東京局 6,154 件(64.4%)
大阪局 1,331 件(13.9%)
名古屋局 699 件(7.3%)
その他 1,367 件(14.3%)
との事。
海外財産の総額としては
3兆6,662億円。
内訳は
東京局 2兆7,485億円(75.0%)
大阪局 4,274億円(11.7%)
名古屋局 1,906億円(5.2%)
その他 2,996億円(8.2%)
なお財産の種類としては下記の通りです。
有価証券1兆9,252億円(52.5%)
預貯金6,204億円(16.9%)
建物4,038億円(11.0%)
貸付金1,705億円(4.7%)
土地1,449億円(4.0%)
上記以外の財産4,014億円(10.9%)
この数字を改めてみて私が思ったのは、「思ったより少ないなぁ~」という印象です。現場で営業をしている感覚としてはもう少しある様にも思います。ただ有価証券と預貯金が70%超という比率は妥当な様にも感じました。
なにより平成30年度よりOECD加盟国による非居住者が保有する金融資産についての相互情報提供がスタートしており、これと国外財産調書の提出状況を照らし合わせたお尋ね&調査が増えているとの事でした。
なおこの制度は、正当な理由なく期限内に提出がない場合又は虚偽記載の場合には、1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金 が課せられるルールとなっております。
国外財産調書の制度は、各国との情報交換制度の開始により飛躍的に海外金融資産の把握が容易になりました。低金利で日本国内での運用はかなり厳しい状況にある中、経営者や資産家の一部は海外での資産運用を積極的に行っています。
相続税に関する部分だけでなく、毎年の運用についての利子や配当に関する所得税課税についても当局が捕捉しやすい状況にありますので、くれぐれもご注意下さい・・・。
<文責>
株式会社FPイノベーション
代表取締役 奥田雅也
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