COLUMN

中小零細企業と医療機関のM&A

先日、提携をしているM&A業者と情報交換を行いました。

最近の傾向としては、規模が小さい事業や債務超過でも売買が成立するケースがかなり増えているとか・・・。

 

中小零細企業の経営者は、「M&Aは大企業のもの」と思っていたのが、「自社も対象になる」と認識が変わってきている様です。

 

そして債務超過であっても強みのある事業や救済目的のM&Aも出てきているらしく、債務超過は売れないという前提も変わりつつあるようです・・・。

 

特に売り希望・買い希望ともに多いのが運送業と建設業で、規模の大小に関わらず案件が多いそうです。

 

どの業種も抱えている人手不足問題は深刻な問題ではありますが、運送業の場合にはいわゆる「2024年問題」と言われている時間外労働規制による運送量の低下と元々の人手不足が重なってかなり深刻な問題になっています。

 

なかなか簡単に採用ができないのであれば、運送会社ごと買収してしまおうという発想で買い希望の会社が多くなっている様ですが、運送業のM&Aはなかなか上手くいかない様です。


一言で運送業といっても、運ぶ荷物は千差万別で何を運ぶか?によって車両が変わるため、ピタッとはまるケースがそれほど多くないとか・・・

 

その点、建設業も業種は多岐にわたりますが、違う工事業であっても相乗効果が出せるケースがあるために、比較的成約しやすいとのこと。

 

建設業も現場作業員の高齢化が進んでおり、若手作業員を確保したくても、元々敬遠されがちな職種なだけになかなか集まらないのが現状です。

 

決算状況がそれほど良くなくても諸事情により成約するケースもあるので、後継者不在で悩んでおられる場合はM&Aという選択肢は是非とも検討したいですね。

 

あと、相変わらず医療機関のM&Aも活況ですが、他業種に比べて成約する率は低いとか・・・

 

開業医が自院を第三者に売ろうと考えるのは、後継者がおらず、健康上の理由などによりご自身が診察を続けるのが困難になってからのケースが多いため、買い手がつきにくいらしいです。

 

これは私も経験があり、ゴールドオンラインに寄稿した記事の事例だけでなく、何度か相談を受けたことがあります。

 

〇ゴールドオンライン

医療機関の場合、診療所の立地がある程度よく患者数が一定以上確保できていて、さらに現医師がしばらく勤務して買い手側へ引き継げるようなケースは成約しやすいのでしょうが、体調不良で診察が継続できない様なケースはなかなか買い手も買いにくいですよね・・・

 

逆の立場になって考えてみれば良くわかるのですが、円滑に引き継ごうと思えば、数年かけて現医師から後継医師へ変わることを患者に周知させる必要があります。

 

そして医療機関のM&Aが成就しにくいもう一つの原因は売り手側の値付けの問題もあるとか・・・。

 

売る側の医師は、医院売却で得られる資金を退職金がわりとして受け取りたいと思うケースが多く、そうなるとある程度まとまった金額を提示することになります。

 

前述の通り診療所の立地が良いとか患者数が確保できているなどの条件がそろえば、買い手側もある程度の資金負担をしても回収できる見込みはありますから、強気な値付けであっても承諾するケースはあるでしょう。

 

ただ現医師の体調が悪く十分な引き継ぎが出来ないケースや、立地が悪くて今後の増患が見込めないようなケースであれば、値付けが高いと相手にされません。

 

この様な状況を踏まえますと、後継者がいない医療機関においてM&Aを成功させるために備えておくべきことが見えてきます。

 

  • 医療機関のM&Aは時間が掛かるので早めに動き始めること
  • 特に体調の問題がなく、患者数が一定以上確保できている状態から動き始めた方がよい
  • 早めに動き始めることで買い手側が見つけやすくなるだけでなく、値付けもある程、強気な設定ができる
  • 体調が悪くなってからとか患者数が減ってから動き始めると売却価格が下がるだけでなく、買い手が見つけにくくなる

 

元気でバリバリ診療が出来ている状態で第三者への売却は考えにくいのかも知れませんが、終活を考える年齢に差し掛かる先生方で後継者の目途が経っていない場合には、早めの検討が必要ですね・・・

 

あとは全業種共通ですが、「買いたい」「引き継ぎたい」と思わせる事業体にしておくことは普段から心がけて経営すべきです・・・。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

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