COLUMN
ウィルス対策資金調達における生命保険活用について
4月7日、政府から緊急事態宣言が発令され、いよいよ本格的にビジネス・生活に甚大な影響が出る状況になってきました。新聞・テレビだけでなくネット上でもにぎわっている「コロナ対策の資金調達」について保険活用という観点から、押さえておくべきポイントをまとめてみます。
経営者が行える資金調達は、
〇新たに資金を確保する
〇今ある資金を減らさない
の2つに大別できると思います。
まず、「新たに資金を確保する」で言えば、
・各種制度融資
・各種助成金
・保険会社の契約者貸付
などの利用が考えられます。
融資制度の活用の是非は賛否両論ありますし、その議論はここでは行いません。助成金については、返済しなくてよい資金ですから、申請出来る場合には申請すべきだと思います。
ただ融資と助成金、特に助成金は入金になるまでかなりの時間が掛かる事が想定されますので、先々は役立つかもしれませんが、今の資金繰りにはあまり貢献しません・・・・
となると、即効性があるのは保険会社の契約者貸付を利用することですが、これについては生命保険と財務を熟知している保険営業パーソンに相談すべきだと私は考えています。
契約者貸付(経営者側からみれば契約者借入)は、すでに払い込まれた保険料のうち解約返戻金として貯まっている資金の一定割合から借りる制度です。ですから仮に将来、返済が出来なくても、解約する際の解約返戻金や保険金・給付金支払の際に元利金を差し引いて支払われます。
この契約者借入を活用する際のポイントとしては、契約者借入として幾ら借りるか?という点です。目安は、当該契約に資産計上部分があるのであれば、その資産計上額累計が目安になるでしょう。
この契約者借入は保険会社や保険商品によって解約返戻金に対して借りられる割合が異なります。最大で解約返戻金の90%まで借りる事が出来ますが、資産計上額の範囲内にしておけば、将来的に解約をしたとしても実際に払われる金額≧借入金とすることが出来るからです。
もう少し詳細に解説します・・・
資産計上部分は、保険料支払時には
普通預金
↓
資産科目(前払保険料)
となり、資産計上部分は貸借対照表上の流動資産から固定資産に移動しただけです。
次に解約をした場合には、
資産科目(前払保険料)
↓
普通預金
となりますから、固定資産から流動資産に移動しただけとなります。
契約者借入として資産計上額を借りるということは、資産科目の前払保険料と同額の普通預金残高が増えて、負債科目の「借入金」が同額増えます。つまり、固定資産を先に現金化する訳ですから、将来的に当該契約を解約した際に、入ってくる返戻金は益金課税される分となり、その返戻金の中から、課税所得があれば法人税等を納税する事が出来ます。
仮に資産計上額以上に借りてしまうと、将来解約した場合には、実際に入ってくる金額よりも課税対象額が大きくなるので、利益額によっては法人税等の納税資金が不足することも考えられます。
そのために契約者借入が出来る金額と、現在の資金繰りで必要な額の兼ね合いになりますが、目安としては当該契約の資産計上額の範囲内で契約者借入を利用するのが良いのではないでしょうか?
次の資金調達である「今ある資金を減らさない」ですが、これについては取引先などへの支払は必ず行わないと事業自体が存続できなくなるので、これは行うべきです。ただ税金と社会保険料については申請をすれば一定期間の猶予が得られる制度があります。この利用は一考かも知れません。当然ながら免除ではなく猶予ですから、将来的な支払は必須ですが、一時的に資金を確保するという観点では検討の余地はあると思います。
あと金融機関の借入についてリスケジュールや返済停止などの手法も考えられますが、これについては詳細な説明は割愛いたします・・・・・
なお生命保険分野においては、今払っておられる保険料負担を減らす事で資金調達につながることは認識しておくべきだと思います。この支払保険料を減らす方法は、1つは猶予制度の活用があげられます。
各社微妙に条件は異なりますが、申請をすれば一定期間の保険料払込が猶予されますので、保障を確保したまま資金流出が防げますので、一考の余地がある制度です。
次に保障内容の見直しですが、保険金額の減額や解約は保障が減ってしまうためにその是非は慎重に見極めなければなりません・・・・
あと、考えられる手法としては、
・保険期間の短縮(保険商品によっては期間延長)
・払込期間の延長
・他保険への変換
・払済保険への移行
・延長保険への移行
などの手法があります。
当然ながら保険会社や保険商品によって出来るものと出来ないものはありますが、これらの手法を検討する場合には、
・課税関係がどうなるのか?
・旧税制の既得権が守られるのか?
・これらによって得られる効果は?
・その後に元通り戻せるのか?
・体況の問題は大丈夫なのか?
などを複合的に検討をして判断する必要があります・・・・
これらの事を総合的に勘案すると、資金繰りに与える影響をある程度正確に判断をした上で何がベストなのか?をお客様ごとに判断出来るのは、生命保険と財務に精通した保険営業パーソンしかいないことは間違いありません。
<文責>
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