COLUMN

生命保険会社の破綻

今年で保険業界に入って26年目を迎えました。この25年間で、2回ほど取扱をしていた保険会社の破綻を経験しています。

1社目は平成11年6月に破綻したA生命です。2社目は平成20年10月に破綻したB生命です。

 

A生命は、私が直接販売をしていた訳ではなく、当時所属をしていた会計事務所が代理店登録をしており保有契約が多数存在していました。その会計事務所の創業者が過去にA生命の総代を勤めていたこともあり、取扱契約も多数ありました。

 

経営不振が表面化した頃から、ご契約を頂いている関与先様を当時の責任者が全件訪問し、状況説明と他社への変更を提案していました。

 

その中で、もちろん快く他社への変更を承諾する人もいましたが、中には「会計事務所が提案した保険会社が経営不振になるとはどういう事だ。会計事務所として提案をした責任をどう取るのだ」とクレームになり、結果的に顧問契約が解約になった関与先もありました。

 

さらには、他社への変更を承諾しながらも、体況上の理由により、変更が出来ずにそのまま継続をされた関与先様もありました。途中で乗り換えたとしても当然ながら契約年齢は加入当時より上がっている訳ですから、条件は決して良くありません。

 

ですが、破綻をして解約金や保険金が減額されるよりかは「マシ」というレベルです。

 

そして平成11年6月に破綻。A生命に残っていた契約者はかなり少なくなっていましたが、その多くは体況上の理由により残っていた訳ですから、保険金額は削減されてしまいました。

 

この時、私が直接的に関わったA生命契約はそれほど多くはありませんでしたが、強く印象に残っている契約があります。

 

50歳代半ばの社長です。卸売業を営む零細企業でした。

 

平準定期か逓増定期かは忘れましたが、多少解約返戻金がある契約にご契約を頂いておりました。この関与先には、先に責任者が訪問をして説明し、A生命から他社へ切り替えることを了承して頂いておりました。

 

その後の切替商品の提案と手続きを私が引き継いで担当をさせて頂きました。

 

いろいろと検討をした結果、某社の平準定期保険への変更を了承頂き、保険金額をその時点の必要保障額にまで引き上げる事もご了承を頂きました。

 

そして診査の手配時に社長の奥様が

「長いこと健康診断を受けていないからこれを機会に人間ドックへ入ったらどう?」

と提案されて、加入予定の保険会社からの紹介で人間ドックを受診されました。

 

その結果・・・・

大腸に腫瘍が発見されました。

 

そして医師による精密検査の結果、がんは進行しており、予断を許さない状況でした。

 

もちろん、既契約の切替は見送りとなり、そのまま継続していただく事になりましたが、その途中にA生命が破綻。

 

その後に社長が亡くなられて、削減された保険金が法人に支払われました。

 

奥様からは、

「あの時、御社から保険会社の情報提供を受けた事がきっかけで早い段階でがんが見つかって良かったです。

あれから私たちも準備と覚悟が出来たので、いきなり宣告されるよりはずっとマシでした。ありがとうございました。」

と最後にお礼を言われた事をよく覚えています。

 

惜しむらくは、A生命の契約では保険金額が十分であるとは言えない金額であった事です・・・。

 

それがさらに破綻により削減されてしまったので、言葉がなかったです。

 

 

2社目のB生命も強烈なインパクトがありました。

 

B生命は元々、経営基盤が弱くリーマンショックをきっかけに破綻をした保険会社です。

 

平成20年といえば、2月28日に逓増定期保険の税務ルールが変更になった時でした。

 

経営基盤が弱い保険会社は商品戦略として何をするか?

 

高額な保険料を集められる一時払商品と法人商品のラインナップを充実させるのが一般的です。

 

このB生命も例外ではなく、無診査・無告知で90歳まで加入出来る一時払終身保険と低解約型逓増定期・終身がん保険を前年に発売していました。

 

元々、経営不安が噂になっていましたので、ほとんど取扱をしませんでしたが、2月28日の税務ルール変更前の駆け込みで1社、ご契約をお預かりしました。

 

あとは死亡保険金の非課税枠を活用する目的で80歳後半の女性に一時払終身をご契約頂きました。

 

これらは直接、私が取扱をした契約です。

 

もちろん、事前に経営不振については十分に説明をしておりましたので、破綻時には、それぞれのお客様からクレームにはなりませんでしたが損をさせた事は事実です。

 

一時払終身保険は元々解約目的ではありませんでしたので、20%程度削減した保険契約をそのまま保持して頂きました。

※相続税を考慮すればそれでもメリットがあったのでまだマシでした。

※途中解約時の早期解約控除による削減率はかなり大きかったと記憶しています。

 

ところが問題だったのが逓増定期保険です。

 

低解約返戻金型で名義変更を前提とした逓増定期保険でした。

 

契約は月払いでお預かりしていたので、破綻月より保険料支払いを停止。

 

失効状態にして破綻処理が進み、契約の取扱が明確になってから状況をみて復活をさせる事にしました。

 

結果は、社長と奥様で2契約お預かりしていましたが、社長の契約は名義変更後のCVは約30%、奥様に至っては名義変更後のCVは約50%の削減でした。

 

試算を繰り返した結果、社長の契約は名義変更によるメリットはギリギリ確保出来ると判断出来たのでそのまま継続。

 

奥様の契約は失効のまま復活させることなく解約となりました。

 

事前に保険会社に不安があることをご理解頂いた上での契約でしたのでクレームにはなりませんでしたが、結果として1千万円近い損害を与えてしまったことになったのは事実です。

 

非常に私にとって苦い経験でした。

 

しかも9年前にA生命の破綻を経験していながら、同じ失敗を2回もしてしまった事が非常に悔やまれました。

 

それから私は、保険会社の健全性について神経質になっています。

 

特に逓増定期の名義変更後に払済終身へ移行させる場合や、長期平準定期保険を活用した退職金積立、終身保険など保険期間が長くなる契約は少しでも不安のある保険会社を使いたくないというのが偽らざる気持ちです。

 

多少、返戻率が悪くても

多少、保険料が高くても

多少、機能的なスペックが劣っても

保険会社が破綻するよりかははるかにマシだと思っています。

 

そんな事を、昨今の新型ウィルスによる景気後退により思い出したので備忘録として書かせて頂きました。くれぐれもご契約される保険会社の健全性にはご注意下さいませ・・・・

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

ご相談については下記リンクよりご連絡下さい。

お問い合わせはこちら

 

この記事に付いているタグ