COLUMN

Case11:既往症のある経営者の生命保険加入について

〈お客さま概要〉 
業 種:サービス業 
相談者:Aさん 2代目社長(50 歳代・男性) 
年 商:8億円

 

懇意にしているB税理士先生から、顧問先Cがコロナ禍で直前決算は減収・減益となり、手元資金を厚くしたいので融資を受けた。そのために保障を検討してほしいが、病歴上、保険加入が難しいので何とか手立てはないか?との相談を頂きました。

初回面談は、B先生の事務所へAさんにお越し頂き、Aさん・B先生・奥田の3者にて面談を行いました。

 

今回のコロナ融資を合わせると借入残高は3億円超となり、ある程度の預金残高があるとはいえ、保障が手薄な状態を何とかしておきたいというのが、Aさん・B先生のご要望でした。

 

ただ、Aさんは過去に大病をされており、加入を問い合わせた保険会社からは、それが原因で「謝絶」との回答だったそうで、「やはり保険の加入は難しいですかね・・・」と少しあきらめたような感じでした。

 

病歴について、詳細を伺うと、3年半前にある病気を突然発症し、手術・入院を経て現在は業務や日常生活には全く問題がなく、定期的に検査のために通院はしているものの現在は投薬もないとの情報を得ました。

 

さらにB先生へ「保障額としてはどのくらい確保すればよろしいですか?」と質問すると「法人で最低でも3億円は欲しいですね。保険金額3億円に対して、コスト感としては2.5%程度までは許容範囲だと考えているので、3億円×2.5%で750万円。月の保険料としては62.5万円程度までに収まるのであれば十分だと考えています」との回答でした。

 

次にAさんに現在の生命保険加入状況をお尋ねすると、法人では生命保険の加入はなく、個人で友人の保険営業から入った保険がわずかにある程度で、万が一の際には多少の保険金が入ってくる程度でした。

 

これを受けてB先生に「個人の保障も少ないようですが、自社株の保有状況と株価はどうでしょうか?自社株対策の状況によってはある程度、個人でも保障が必要なように感じるのですが・・・」と質問すると、Aさんが80%保有し、残りは先代社長(父)と奥様(母)が持っているが、法人は繰越欠損金と含み損を抱えた資産があるので、しばらくの間は株価はほぼゼロだと考えてよいとのこと。ただ業績は好調で、かなりのペースで借入金返済ができる収益状態で、将来的には株価の上昇は想定されるとのこと。

 

私からは「お伺いした病歴で、本当に保険加入ができないかどうかは各社問い合わせをしてみます。もし引受ができる保険会社があった場合には、保険料の割増などが付くので普通に加入するよりは保険料はあがりますが、先ほどB先生がおっしゃった2.5%以内のコストで収まるのであればよろしいですか?」とご質問をすると、Aさん・B先生ともにO
Kとのこと。

 

さらに私から「生命保険に加入できる場合には、将来の自社株対策も含め役員退職金積立機能のある保険商品も合わせて検討をしたいのですが、これも合計コストが2.5%以内に収まるのであれば選択肢に入れてよろしいですか?」という質問をすると、Aさんが少し嬉しそうに「それは良いですね~。もともと60歳になったら後継者へ事業を譲って私は引
退しようと思っていましたから」と笑いながら話されました。

 

詳しくお話をお聞きすると、長年同族経営でやってきただけに、専務として従兄弟がいるので、従兄弟に一旦はバトンを渡し、その後に息子にあとを継がせるつもりだということ、ご自身が事業承継した時は、親父から何も聞かされずにある日いきなり「今日からお前が社長だ」と言ってバトンを渡されたお話などをされました。

 

B先生からも「役員退職金の積立は預貯金である程度はできていますが、これをその時点で本当に出すのが良いかどうかは、経営状況を見てになります。ですから別途生命保険で積立ができるのであればよいですね。コストの範囲内で損金にはこだわりませんから、保障確保と積立ができるのであれば良いと思います」とのこと。

 

保険加入ができるのであれば、10年定期で必要保障を確保した上で、予算枠に余りがあれば積立商品も検討する旨を説明し、面談を終えました。

 

面談を終えて、早速取り扱いができる保険会社の「引受の目安」を確認すると、2社が加入できる可能性があるとのこと。逆にそれ以外の保険会社はすべて謝絶という状況でした。

 

この2社の担当者へ詳細を確認すると、状況によっては謝絶もあり得るが引受ができる可能性はあるとのことで、引受可能時における割増保険料のイメージを確認すると、両社ともに予算の範囲内に収まっていました。

 

そのことをAさん・B先生へメールにて報告し、詳細なプランニングは加入がOKになってから提示するが、まずは加入ができることを確定させる必要があるので、診査を受けて頂くことを説明、日程を調整し生命保険会社2社の診査を同時に行いました。

 

ここで少し迷ったのは診査内容です。

 

Y社は保険金額5億円までは血液検査が不要なのですが、X社は2億円超で血液検査が必要になります。そのために幾らの保険金額で査定を行うか?に悩みました。X社へ確認をすると、血液検査を行った結果によっては、発症した疾患に対する割増保険料が緩和される可能性もあれば、謝絶になるリスクもあるとのこと。

 

事前のヒアリングでAさんは定期的に検査を行っており、その内容は「問題ない」と医師の判断も出ているとお伺いしていたので、割増保険料が緩和される可能性に掛けて、X社は採血を選択しました。

 

その結果、X社とY社ともに引受は可能ですが、割増保険料の条件が付きました。

 

その内容はX社が通常保険料の約2.5倍。Yは約4倍の条件でした。明らかにX社は血液検査の状況が良く、割増条件が緩和されていました。

 

保険料水準で見ると間違いなくX社なんですが、ネックは特別条件が付くと更新や変換ができない点です。それに対してY社は保険料は高いのですが、特別条件が付いてもその特別条件を引き継ぎますが、他保険への変換が可能です。

 

そのために2通りのプランニングをしました。

プラン①
X社:長期平準定期保険1億円
Y社:収入保障保険2億円(一時金ベース)

2つ組み合わせて3億円の保障を積立を兼ねた内容

 

プラン②
X社:収入保障保険2億円(一時金ベース)
Y社:15年定期1億円

必要な保障を確保しつつY社は10年後に勇退される際に他保険(終身保険や長期平準定期)へ分割してコンバージョンすることを想定

 

収入保障保険を使ったのは、借入金対策としての保険であり、元金が減っていくのに合わせて保障を減らすことで保険料負担を抑えて保障を確保することを狙いました。両方のプランとも想定コストの2.5%以内に収めることができ、Aさん、B先生ともご満足頂きました。

 

Aさんからは「このコロナ禍で減収・減益となっており、今期も急激に回復することはあまり考えにくいので、できればコストは抑えておきたい。本来ならX社だけにしたいところですが、奥田さんがおっしゃるとおり、将来活用する選択肢を考えればY社も混ぜて積立をしないプラン②が良いかと思います」との判断をされ、B先生も了承されてプラン②でご契約をお預かりしました。

 

契約手続き時にAさんからは「病気になってもう保険は入れないと思っていましたが、やはりB先生に相談をして奥田さんを紹介してもらって良かったです。ありがとうございました」と感謝して頂けました。

 

保険商品を販売する際にいろいろな知識や情報は必要ですが、特に取り扱う商品の特性や保険会社の引受スタンスなどはプロとして最低限知っておくべき知識だと改めて感じた事例でした。

 

<文責>

株式会社FPイノベーション

代表取締役 奥田雅也

 

 

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